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鐘井 輝 経営事務所

「支払勘定回転率と受取勘定回転率」

支払勘定回転率と受取勘定回転率
 
中小企業診断士 鐘井 輝
 
 支払勘定回転率は債務の支払状況をみる指標であり、受取勘定回転率は売上代金の回収の早さを表す指標である。両回転率を合わせて検討することで、資金繰りの状況を知ることができる。以下簡単にそれぞれの回転率の見方をみてみよう。
 
1.支払勘定回転率
 一般的には次の算式で算出される。[当期商品仕入れ高÷(支払手形+買掛金)]。この数値が高いほど支払状況が良いことを示し、健全な仕入条件にあることを意味する。すなわちゆとりを持って支払っているということである。逆に回転率が低下すれば支払期間が長引き、資金繰りが悪化しているおそれがある。
 この式で健全企業といわれる中小企業の標準的な平均値は、製造業6.0回、卸売業8.4回、小売業15.7回などの数値となっている。
 業種別平均値等と比較して低い場合は支払能力に問題があると考えられ、買掛金や支払手形を調査する必要がある。この場合、買掛金が過大になっていないか、サイトが長くないか、融通手形等が含まれていないかをチェックする。支払手形は不渡りになると企業にとって致命傷となるので厳重に管理することが望まれるのである。
 
2.受取勘定回転率
 一般的には次の算式で算出される。[純売上高÷(受取手形+売掛金)]。割引手形がある場合は分母の売上債権に割引手形を含めたほうが良い。
 この数値が高いほど売上代金の回収が速いことを示し、逆に低い数値は代金の回収が遅いことを示している。従ってこの回転率が高いほど資金の回収効率が良く、資金繰りが楽であることを意味する。回転率が低い場合は売掛金の回収速度が遅かったり、不良債権の発生のおそれがあり、資金繰りが苦しいことを意味する。
 この式で健全企業といわれる中小企業の標準的な平均値は、製造業6.7回、卸売業8.9回、小売業39.9回となっている(割引手形含まない)。
 業種別平均値等と比較して低い場合は売上債権の回収期間や内容をよく調査する必要がある。この場合、売掛金に回収困難な不良債権はないか、無理な押込販売などで売掛金が増加していないか、受取手形に融通手形などがないかをチェックする。
 
3.回転差資金
 上記2つの回転率は、両者の回転率の差の広がりでとらえるとより活きたものになる。すなわち、資金繰りの観点から支払勘定回転率と受取勘定回転率は対応して検討する必要がある。
 支払勘定回転率は受取勘定回転率より低いほうがよい。売上により入ってくる資金と比べ、仕入資金のほうが少ないと資金繰りに余裕がなくなる。また、受取勘定対支払勘定比率によっても収支のバランスや企業間信用の状態をみることができる。[受取勘定÷支払勘定]で算出される比率だが、100%以上は欲しい。さらに両回転率を回収期間という回転日数に置き換えて、支払勘定回転日数・受取勘定回転日数の算出という方法で併せて評価することも望まれる。
 
    図表   業種別受取勘定回転率平均値
製造業関係 回 卸売業関係 回 小売業関係 回
缶詰製造業 6.7 織物卸売業 5.1 酒小売業 50.8
味そ製造業 11.5 衣服・身の回り品 5.3 スーパーマーケット 104
醤油食用アミノ酸 7.2 靴卸売業 4.6 コンビニエンスストア 121
水産練り製品 17.2 野菜・果物 39.4 織物衣服身の回り 41.1
パン菓子製造業 19.3 生鮮魚介類 21.8 靴小売業 83.3
清涼飲料製造業 7.8 パン菓子 6.5 かばん・袋物 105

 

   (出所)「中小企業の経営指標平成11年発行」
 
月刊「税理」2000年1月号掲載原稿

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