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鐘井 輝 経営事務所

「アウトソーシングの上手な活用法」

アウトソーシングの上手な活用法
                      中小企業診断士・販売促進学会副会長 鐘井 輝 

 
本業へ自社の強みを集中させる必要性 
 自社が顧客に対して他社にはまねのできない価値が提供できる、核となる本業(Core Competence)に集中する動きが活発になっている。自社の限られた経営資源の中での戦略が求められるのである。具体的には、Aキーポイントになる戦略上の目標に経営資源を効率的に集中すること、Bより効率よく経営資源を集中すること、C高い価値の創造を目指して、ある経営資源を別の経営資源で補完すること、D可能な限り経営資源を保守すること、E経営資源をできるだけ短時間に回収することである。そのためには核となる本業以外の業務をそれが得意な業者に外部委託をする必要がある。アウトソーシング(Outsourcing)とは外部資源の活用を意味し、これによりコストの削減と同時に、外部の専門性を積極的に活用することで業務の質を高めることも可能になってきている。
 企業がアウトソーシングを活用する動機は様々であるが、バブル経済期においての安易な事業拡大やバブル崩壊後の売上高低迷による業績の悪化、販売管理比率の上昇により間接部門のコスト削減の必要性の発生など企業を取り巻く経営環境の変化の影響は大きい。 
 
アウトソーシング分野の拡大と導入条件
 今までは伝統的に外部機関を利用してきた物流・施設管理・セキュリティ分野や社内では十分対応しきれないソフトウエア開発・法務・広告・品質検査などの分野、補助的周辺的な業務で外部機関を活用しやすいとされてきた清掃関係・ファイリング・機械保守などを中心に行われてきた。
 
 現在では教育研修、経理、総務、福利厚生、調査研究開発、マーケティング、仕入、店舗運営管理、スーパーバイジング、商品企画、事業戦略立案、営業、販売など今までそのほとんどが社内で行われていた分野まで対象領域が広がり、あらゆる業務がアウトソーシングの対象になってきている。
 
 通常アウトソーシングは「社内でやりたくない」または「社内でできない」にかかわらず、社外で行った方がよい業務として、最初はコスト削減の対策して導入が図られる。例えば、経理業務をアウトソーシングしたとすると、従来の経理担当者の人件費が新しい価値の創造に貢献することができれば、その部分に効果があったといえる。さらに経理担当者の突発的な退職などのような緊急的な事態への対応も可能となり、不安定な要因を取り除く効果も生まれる。しかし、あらかじめアウトソーシングすることにより、余裕のできる人材をどのように活用するかを検討しておかなければ、経費削減が得られずかえって経費増を招くおそれがあるこを留意しなければならない。
 
 自社でアウトソーシングを活用しようとする場合、得られるであろう効果を明確にする必要がある。まず追求すべき効果はコストの削減であり、本業で発生する業務に集中することでのコストダウンを図る。さらに本業以外の業務を自社で行う場合のコストとアウトソーシングを活用時のコスト、すなわち人件費格差の解消を目指すべきである。
 
 2番目に追求すべき効果は業務の質の向上である。自社の本業で発生する特定の業務を多く経験するこで経験蓄積が可能となり、質がレベルアップする。同様にアウトソーシングで行われる業務の質も高い専門性が保証されなければならない。
 
 3番目に追求すべき効果は業務の迅速化である。特定の業務について徹底した改善が可能となるため業務プロセス改善を実現すべきである。この場合、外部委託した業務との連携が必要不可欠である。
 
アウトソーシングの種類と活用時の留意点
業務を外部に委託する場合の形態は大きく分けて以下の5つに分類することができる。
 
A代行型
委託側がどう行動したらよいかまでを指示し、その通りに動いてくれることを期待する形態である。
 
B請負型
一定のゴールや状態を提示してそのプロセスは受託側に任せる形態である。
 
C派遣型
委託企業へ専門スタッフは投入するが指示命令の主体が受託側にある形態である。
 
D機能型
本来のアウトソーシングであり、委託企業の経営機能の一部を受託して企画・計画・遂行・フォローのプロセスを通して、最適な結果を提供することを期待される形態である。
 
Eコンサルティング型
一定の経営課題の解決を目的にして期間を限定し、プロジェクトで動く形態である。
 
 委託時に留意すべきポイントは事前にアウトソーシング業務範囲を明確化しておくことである。また、アウトソーシング運用においては通常受託側が委託企業へ常駐することが困難である場合が多い。その結果、コミュニケーションの希薄さを招くことからもアウトソーシング運営面での留意すべきポイントとして、定期的な打ち合せや事業結果報告(レポーティングシステム)の採用による事前のコミュニケーションシステムの確立がある。

                  ダイヤモンド「月刊中小企業」1999年4月号執筆原稿

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